凡人にはうかがい知れない力を持った人に惹かれる。同じことをしているはずなのに異質なほど抜きん出ている、独り勝ち状態の人、「天才」に惹かれる。 もちろん陰では大変な努力を積んでいるのだろうけど、彼等の能力は単なる技の研鑽だけでは得られない、人間の理解を超えた“何か”に支えられているのではないか。そうした「天才」を、私はもっと深く知りたい。彼等が神様から与えられ、自分自身の精進でさらに極めようとしている“何か”が何なのかを知りたい。 テレビに映る彼に目が釘付けになったのは、去年のことだった。ダークスーツを身に纏った青年の鋭い眼光、引き結んだ口元。鬼気迫る、とはこのことか、囲碁をまったく知らない私にも一目で「強い人」とわかった。ザッピング途中でリモコンを持ったままポカ〜ンと口を開け、あれは何のタイトル戦だったか、身動きも忘れてそのプロ棋士の姿を見ていた。そして勝者インタビューでは別人のよう、