(前回の記事から読む) 「大石は死なず」――。 死ぬ、死なないなどと、政治家か侍のように何やら物騒な響きの言葉だが、れっきとした囲碁の格言だ。「大石」は、そのまま“おおいし”と読む。囲碁では、碁石の一つひとつはとても頼りない小さな存在だ。自分の石の四方を敵の石に取り囲まれれば“死んだ状態”になり、相手に召し上げられたうえに、その石が置かれていた領域は相手の領地になってしまう。 しかし、碁盤上で自分の石同士がつながりを持って大きな石に成長すると、頼もしい存在に一変する。石の存在感は増し、自分の領地を囲む城壁となって相手からの攻撃にも強くなる。石のつながりを作り上げる戦略を練ることが囲碁というゲームの基本であり、難しさであり、本質と言えるだろう。 碁石を人、盤面をビジネス領域に言い換えれば、これはそのままビジネスや日常生活にも通じるのではないだろうか。一人ひとりの力量では、とても実現できないこ