コロナウイルスによる新型肺炎が世界を揺るがしている。ウイルスによって多くの人の命が奪われているだけでない。不況になり、仕事を失う人々も増え、さらには、アジア人に対する人種差別も増加している。ヨーロッパでは「戦争」のメタファーが用いられ、リベラル派のリーダーたちでさえも、まるでつい先日までの右派ポピュリスト政党のように「団結」・「連帯」の必要を唱え、国境閉鎖や市民行動の監視などを徹底化させている。もちろん、すべては必要だ。だが、次のように問うことも重要だろう。この危機は、どのような矛盾を隠蔽し、抑圧を孕んでいるのか? この危機は、どうすれば好機に変えることができるのか? 以下は、General-Anzeigerというドイツの新聞にボン大学のマルクス・ガブリエルが寄稿したコラムの翻訳である。『未来への大分岐』で彼と議論し共通了解できたポイントを数多く含む内容だ。我々は自然科学だけを信奉し頼って