ここ、リムサ・ロミンサにおいては、後ろ暗い奴こそ白を纏う。それが一番、街並みに溶け込むからだ。白い髪を持つお前は、生まれながらに悪党向きってわけだな―― まだあどけなさの残る、幼いサンクレッドの髪をひっつかんで、男は吐き捨てるようにそう言った。両者の間に血の繋がりはない。物心つく前に親に捨てられ路上で生きてきた少年と、それを二束三文で雇って悪事の片棒を担がせようとする商人……それだけの間柄だ。 時はまだ、メルウィブによって海賊禁止令が敷かれる前の時代。強さこそが生きる道となる海都において、商人を睨め上げつつも無言で耐える少年のことを気に掛ける者はいなかった。 悪辣な雇い主がいれば、少しはマシな雇い主もいた。簡単な仕事に喜んでいたら、次は酷い目を見ることもあった。何にせよ、仕事が終われば縁も切れる……そんな関係を積み重ねながら、サンクレッドは育っていった。幸か不幸か、彼はとびぬけて器用で身軽