昔、文京区でぶどうのツタで鞄を作っている職人さんに聞いたのだが、鞄を長く使う時の重要な手入れは「撫でる」ことだそうだ。職人さんがツタで作った30年前のカゴが二つあり、片方は使い込まれたもの、片方はデッドストックだった。後者は干からび細っていたが、前者は明らかに艶があり、鈍い光沢を潜めていた。曰く、人間の手には油があるので、たびたび気にかけて撫でるだけで積み重なり美しい艶となる、とのこと。人の油は必ずしも汚いわけではなく、それは鞄にとって栄養であることもある、だからあなたも手をかけてやることを惜しまないで欲しい、そうすれば鞄も応えてくれるだろう、と職人は目を合わせずに話してくれた。
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