2021年2月から始まる大河ドラマの主人公であり、2024年度に一新される1万円札の顔となる渋沢栄一はしばしば日本資本主義の父と称されるが、彼は同時に日本の住宅地の父でもある。 19世紀末、都市労働者の労働・居住環境改善のためにイギリスのエベネザー・ハワードが提唱した都市と農村の魅力を併せもつ理想都市「田園都市」の概念などの一部を日本に輸入、1922(大正11)年に洗足田園都市、翌1923(大正12)年に多摩川台住宅地(現在の田園調布)を開発したのが、渋沢らが設立した田園都市株式会社だったのである。 ことに田園調布は1980年に漫才師の星セント・ルイスが放った「田園調布に家が建つ」のネタで知られるようになり、ほかに同等(以上も含め)の住宅地があるにもかかわらず、高級住宅地の代表格として知られるようになった。だが、近年渋沢が脚光を浴びる一方、田園調布の凋落を指摘する声をよく聞く。空き家や空き