重厚な扉を開け中に入ると、まるで過去へタイムスリップしたかの様にレトロな雰囲気が漂う。ここは日本橋茅場町。隅田川に面した、このヴィンテージビルの一角にテーラー「羊屋」はある。扱うのはハンドメイドのビスポーク・スーツのみ。それも全体の8割が手縫いによるもの。採寸から型紙作り、仮縫い、縫製までのすべての工程を一人でこなす。そのため1ヶ月に仕立てられるスーツは3着が限界だという。隠れ家のようであり、自然光がやさしく差し込む明るいアトリエはヴィンテージ好きにはたまらない居心地の良さを感じてもらえることだろう。 「スーツはあくまでも脇役。着る方が主役になり、個性を引き立たせるために仕立てることが僕らの仕事だと思っている」と話す中野さん。自身のスタイルも以前は変わったデザインの生地やスタイルが多かったが、年齢のせいか最近はベーシックな方向に落ち着かせ、その分、着こなしに気を使い、着崩しすぎてだらしなく