最近どうにもレモンパイが恋しくてたまらない。カフェや喫茶店で頬張ると、なんだか懐かしい気持ちになる。 もちろん、僕が生まれ育った山梨の韮崎という街にはレモンパイを出しているカフェや喫茶店などない。 あるのはおっちゃんたちが自分の畑で取れた作物を持ち寄って飲み会をするフリースペースと化した居酒屋と、チャーシューの代わりにかまぼこをのせたラーメンを提供するお粗末な定食屋くらいだ。 ハイカラなものがまったくない地域で育った僕でも、レモンパイのモフモフでほんのりと甘いメレンゲに、柔らかい酸味が効いたレモンクリーム、パリッパリのパイの組み合わせは「懐かしい」と思ってしまう。 もしかしたら、レモンパイの懐かしさは虫の走性と同じように遺伝子に組み込まれた生得的なものなのかもしれない。 そんなことを考えながら僕は、毎日のように行ける範囲のレモンパイを食べ歩いた。 ときには焼肉食べ放題へ行く約束の前にレモン
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