若者向けの娯楽小説「ライトノベル」から、大人向けの小説に進出する作家が目立っている。少女小説や児童文学からの越境組に続くこの流れは、いずれは直木賞などにもつながるのではないか。(佐藤憲一) 「自分の本当に書きたいことをやるには超能力や異世界の設定を要求されるライトノベルでは難しい。この世界に安泰せず、一般小説でも勝負したかった」 先月、恋愛小説『流れ星が消えないうちに』を文芸出版の老舗、新潮社から刊行した橋本紡(つむぐ)さん(38)は言う。ライトノベルの主要レーベル、電撃文庫(メディアワークス)の新人賞でデビューし8年。軽さを特色とする同文庫の人気作家の一人だが、初めて一般向けに書いたこの本は、恋人を失った喪失感や家族の絆(きずな)を静謐(せいひつ)に問いかける。発売直後に増刷が決まり出足は好調だ。 ライトノベルは主に10代読者をターゲットに、会話やキャラクターの比重が大きい文庫や新書判の