S氏の《交響曲第1番》を最初に耳にしたのは、初演(2008年広島)の時の様子を映したYouTubeでの録画だ。この時は、G8議長サミット記念コンサートという名目で《交響曲》の1・3楽章が披露された(さすがに全曲では「長すぎる」と主催者側が判断したのだろう。それでもたっぷり40分以上という大曲だ)。 その頃のS氏はWikipediaにも未記載の無名の作曲家(ゲーム音楽マニアなら鬼武者の音楽で名前くらいは知っていたのかも知れないが)。当然、会場に聴きに来ていたお客のほとんどは「広島出身の若い作曲家」というくらいの知識しかない一般の人たちだったと思う。しかし、その「誰もが初めて聴く」しかも「オーケストラだけ」の音楽が「歌も映像も何もなく」1時間もの間延々と流れるのを、ホールを埋めた聴衆は(少なくとも)飽きることなくずっと耳を傾け、曲が終わると同時に万雷の拍手を浴びせていたのである。これは(実を言