野生生物は厳しい自然界をそれぞれの才覚でなんとか生き抜いているはずなのだが、他の生物に頼って生きているものがいる。そう、寄生生物だ。宿主となる生物の体を住処にし、こっそり栄養を掠めとり、時には重篤な症状をもたらす厄介な寄生生物。これらのなかにはよくよく生態を見ると実に不思議な暮らしぶりをしているものがいる。そこで、『寄生虫の奇妙な世界』(誠文堂新光社)の著者である斉藤勝司さんに、驚きに満ちた生態を持つ寄生生物ベスト5を推してもらった。 カニに寄生するフクロムシ フクロムシは分類学上、フジツボやカメノテに近い生物だが、磯の岩に付着することなく、カニに寄生することが知られている。卵からかえったフクロムシの幼生はすぐに寄生せずに、海中を漂うプランクトンの生活をするが、ケントロゴンと呼ばれる幼生になったメスはカニの体内に侵入。カニの体中に根のような器官を張り巡らせて栄養を吸収する。 カニから栄養を