下水の汚泥を「食」に生かす取り組みが、全国で広がっている。国土交通省や業界団体の日本下水道協会(東京)は、「ビストロ下水道」と命名してPR。国交省は「『おいしい食材のサポーター』である下水道の力を知って」と訴える。 「実が3割大きくなった」。愛知県豊橋市のビニールハウスで、大玉に実ったトマトに、豊橋技術科学大特任助教の熱田洋一さんは手ごたえを感じた。収穫がピークを迎え、大学生や職員たちが、不慣れな農作業に汗を流す。 ハウスは下水処理場である県豊川浄化センター内にある。汚泥などの不要物を生かそうと、大門裕之教授の研究室を中心としたプロジェクトチームが2011年、トマト栽培を始めた。 「切り札」は汚泥の処理で発生する二酸化炭素。ハウス内に吹き込んで濃度を上げると、苗の光合成が進む。通常栽培と比べ、「味も濃厚」と熱田さん。苗には窒素やリンが豊富な再生水も吸わせ、年に3~4回収穫し、市場にも出荷す