犬にも心がある。だから人間のように心を病むこともある。しかもこの数年、精神疾患にかかる犬が増加傾向にある。犬の心に何が起きているのか―――。 生後2カ月でペットショップから買われてきたオスの柴犬。飼い主宅に迎えられて数カ月がたったころから、自分のしっぽを追うようになった。 最初は遊んでいるような様子で気にならなかったが、次第にほえ声も加わった。さらにはしっぽを追って激しく回り始め、ついにしっぽをかじって傷つけるように…。東京大学附属動物医療センター(東京都文京区)に連れてこられたのは、かじった末にしっぽが半分になってしまったからだった。 この柴犬に獣医師が処方したのは、抗うつ薬の一種「アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩錠)」。さらに、犬とのかかわり方や、ケージの置き場所を変えるなどして落ち着いた環境を作ってあげるよう指導した。すると、初診から2カ月後には、しっぽを追う行動はほとんど