(英エコノミスト誌 2014年9月6日号) 先進国全体で賃金が停滞している。 各国の中央銀行はかつて、賃金の高騰を激しく批判していた。1970年代のような、物価と賃金がともにスパイラル的に上昇する破滅的な事態に逆戻りしないように、という先入観が常に働いていたのだ。ところが、金融危機以降、中央銀行は全く逆の悪循環を懸念してきた。賃金の停滞と、拡大するデフレのリスクだ。 先進国ではここ数年、賃金の下落傾向が見られる。経済協力開発機構(OECD)が9月3日に発表した今年度の「雇用アウトルック」によれば、OECD加盟国では2010年から2013年にかけて、実質賃金(インフレ調整後)が横ばいだったという。 国・地域によって異なる賃金停滞の理由 その間、米国はほとんど上昇していないし、ユーロ圏と日本では減少している。ポルトガルやスペインなど、問題を抱えるユーロ圏の周縁国の落ち込みが特に激しいが、英国も