アヘン戦争後の内憂外患から辛亥革命へ。近代国家へと生まれ変わる中国に生きた啓蒙思想家であり、祖国のために「富強」を追求した厳復の姿を、同時代に富国強兵への道を歩んだ日本を… 厳復(げんふく)―富国強兵に挑んだ清末思想家 [著]永田圭介 厳復――その偉大さを日本人にわかりやすく伝えるためか、本書の帯に「中国の福沢諭吉」の文字が躍る。トマス・ハクスリーの『進化と倫理』をはじめ、ハーバート・スペンサーの『社会学研究』やアダム・スミスの『諸国民の富』、モンテスキューの『法の精神』などを翻訳し、西洋近代思想を中国に紹介して、国の富強への道を模索し続けた中国近代啓蒙(けいもう)思想家である。 しかし、その名の浸透は、日本の一万円札に印刷された福沢諭吉に遠く及ばず、外国人はおろか、現代中国においても教養階層にとどまっている。この現象こそが、中国はいまだに政治の近代化を実現できていない所以(ゆえん)を語っ