元禄2(1689)年に創業し、戦後の食糧難による原材料不足で昭和24年頃に廃業した奈良県田原本町の老舗しょうゆ蔵元「マルト醤油(しょうゆ)」が、70年の空白を経て復活を目指している。廃業を余儀なくされた当主の孫が、当時のまま残っていた蔵の中で奇跡的に生き続けていた酵母菌を発見。この酵母菌を使って2月にも本格的にしょうゆの醸造を始め、その2年後の商品化を目指す。(川西健士郎) 【写真でみる】酵母菌が生き続けていた醸造蔵 老舗のしょうゆの復活を担うのは、18代当主にあたる木村浩幸さん(43)。平成13年に17代目の祖父、藤平(とうべい)さんが87歳で亡くなった際、「蔵を廃業時のまま残していた祖父は、蔵を閉じたことに負い目があったのではないか」と思い至り、しょうゆ造りの再開を考えるようになった。 直接的な転機は10年後。蔵から千点以上の古文書が見つかり、醸造の製法を示しているとみられる記述もあっ