漆黒の釉(ゆう)面にきらめく斑紋が星のように浮かぶ中国・宋時代の茶碗(ちゃわん)「曜変(ようへん)天目」。この再現に取り組む愛知県瀬戸市の陶芸家、長江惣吉さん(54)の作品を集めた「曜変・長江惣吉展」が、市美術館で開かれている。22年に及ぶ研究でたどり着いた成果と、その技法によって創作された独自の世界が広がっている。 江戸時代から窯業(ようぎょう)原料商、窯元と続く家に生まれた9代目。戦後、曜変の再現に取り組み始めた8代目の父・惣吉氏が、1995年に亡くなり、跡を継いだ。「天下一の茶碗とか国宝の再現とか、重苦しくて。その気はなく、父と反目していた。亡くなった後、間に立って苦労した母から父の思いが伝わってきた」と振り返る。 96年に初めて曜変が作られた中国福建省の建窯(けんよう)を訪ねた。そこで手にした陶片に曜変につながるものを感じた。以来、訪問は28回に及ぶ。「同じ土で作らなければ再現はで