『大山康晴の晩節』(河口俊彦著・新潮文庫)より。 【棋士がいちばん勝てるとき、すなわちピークは25歳くらいである。加藤一二三は18歳でA級八段になり、中原誠は24歳で名人になった。史上最年少名人の記録を作った谷川浩司が名人になったのは21歳。羽生善治は24歳のときである。 ピークはだいたい30歳くらいまで維持できるが、それからはほんの少しずつだが、棋力が落ちはじめる。そして40歳を過ぎるとガクンと落ちる。あるとき私はそれに気が付いて、男の厄年は本当だ、と思った。A級中堅で活躍していた棋士が、40歳前後になると、B級1組に落ちる。それまでの力を私達は覚えているから、1年でまたA級に戻るだろうと見ていると、さらにB級2組に落ちてしまう。そんな例は、大内延介、板谷進、桐山清澄、勝浦修、その他たくさんある。さすがにB級2組の格ではないから、B級1組にすぐ戻るが、A級までは戻れない。 50歳ともなれ