「私の部屋で一緒に暮らす?」 彼女からの言葉を そこまで噛み砕かずに 「うん」とだけ返してから、 もうずいぶん月日が経った。 ふわりと届く畳のかおりに 心までからめとられて、 もうどこにも行けそうにない。 約6帖の和室と、約4帖の和室。 もともとは彼女の家だから 大きいほうを使うだろうと 思っていたけれど、 「押入れが広いほうがいいの」と 6帖の和室をゆずってくれた。 「服がたくさんあるし、 床の間も気に入ってるから」 奥行きのある押入れに、 大量の彼女の服がすっぽりと。 床の間にも飾られたバッグや アクセサリーを見て、 なるほどこのスペースは 彼女だけのものだなと思った。 私がやってくるまでは ふすまを取り外して ゆったり過ごしていたのに、 きちんとはめ直してくれて。 いいのかな、ここまで いろいろやってもらって。 不安が忍び寄ってきたとき、 見抜かれたのか彼女が言った。 「うれしいね、