甘くてとろけるケーキのようだと、 この家に帰ってくるたびに思う。 ふんわりしたクリーム色が たっぷりと塗られた外観は、 夜を照らす灯りのように わたしをいつも導いてくれる。 ケーキの中には果物があり、 この家の中には彼女がいる。 どちらもみずみずしく 生命力に満ち溢れたそれらは、 関わる人の心にポッと 生きる活力をくれるのだ。 玄関を開けると、だいたい 上から彼女の歌う声がする。 歌声に誘導されるように、 シューズボックスに 靴を入れたらすぐに 階段をトントンと上がる。 2階建ての2LDK。 彼女と暮らし始めて、 あっという間に1年が経つ。 楽器相談ができるこの家を、 見つけてきたのは彼女だった。 この家で一緒に暮らさないかと、 言ってくれたのも彼女だった。 彼女が与えてくれるものを いつも受け取るばかりで、 わたしはなんて幸福で 甘ったれなのだろうと思う。 こうしている今だって、 10.