もう一度、あの頃を 過ごすとしたらこんな部屋。 初めて呼んだあの子にビールを開けて、 お気に入りの水色のバルコニーに出て。 ふたりでカメラに変顔を向けた画から 撮り出してつくった初めての映画。 それは正直「映画」と呼べるほど 立派なものじゃなく、 植物の水やりで汗ばんだ君の笑顔や そのおでこに張り付いた ねこっ毛を撮れる理由がただほしくて。 床に写るふたりの影が重なるのが なんだかうれしくて、撮りたくて。 たどたどしく怪しかった君の包丁さばきも 実家から届いた段ボールに 干し芋を見つけては 嬉々として上げていた大きな声も 届いたばかりの服でする ファッションショーも撮りたくて。 初めてのクリスマス、 初めてのシャンパンにはしゃぎすぎて 立てこもって焦らせたユニットバスも 洗濯物は撮らないで! って 本気で怒って僕を焦らせたあの背中も 小さいほうのバルコニーで ビルの向こうに探した花火大会も