皆殺しの天使 : 「生物と無生物のあいだ」・酷評1/2 皆殺しの天使 : 「生物と無生物のあいだ」・酷評 2/2 上記で酷評されているので、ゆるやかに擁護してみる。結論からすると、これは「講談社現代新書」なのであって、「ブルーバックス」ではないのだ。そこには、かなり決定的な意味があるようにも思う。読者が求めるべきなのは、生物と無生物のあいだに横たわる複雑性の臨界などについてではなく、現役科学者の書く美しいエッセイなのだろう。 そして気付くべきは、この本は生物と物質たる無生物の臨界を論じている一般向け解説書なのでは決してなく、生物学と非生物学の対比の中で、生物学とはいかにロマンあふれる学問であるかという物語を通じて、予算や学生を生物学領域へと引き入れようという、プロパガンダ作品でもあるという点なのだろう。正確さよりも強さや美しさが優先される領域というものは、確実に存在する。 そういう限定付き