ちかごろはどう、と彼は訊いた。総じて敗北している、と私はこたえる。ラブ的な意味で、と彼は念を押す。ラブ的な意味で、と私はうなずく。僕も敗北続きだねと彼は言う。私たちは同じ会社に勤めていて、ときおり食事をともにする。 私たちはお互いの様子を眺め、だいじょうぶ、私たちの敗北はきっと永遠ではない、という意味のせりふを言いあった。もう自分には需要がないのでは、と弱気になったとき、それを否定してくれるとわかっている異性の友だちと話す。いいことだ。 予定調和、と彼は小さい声で言って、インドカレーとナンの皿を視線で走査した。きっと両方がちょうどよくなくなるように計算しているのだ。私はとうにそれをあきらめている。 予定調和は大切だよと私はこたえる。心がなぐさめられるし、お互いを理解しているという証にもなる。でもつまらないと彼は言う。それを必要としている自分の状態がつまらない。 カリヤさんと会ってると訊くと
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