昨年惜しくも亡くなった杉浦日向子氏は、前回紹介したインリン氏、雨宮処凛氏と同様、若いころフリーター生活をしていたことがあるそうだ。もっとも、杉浦氏(1958年生まれ)がフリーターをしていたのは1980年代後半で、インリン氏や雨宮氏がフリーターをしていた時代とはだいぶ違う。それにしても、杉浦氏のフリーター生活についての見方は、後の二人とは対照的である。『一日江戸人』(1998)の冒頭箇所で彼女はこう書いている のっけから私事で恐縮ですが、一九歳の夏から三年余り、私はアルバイターでした。短期のバイトを転々とし、ぶらぶらしていました。二週間働いて三週間ぶらぶらする。あるいは、一か月働いて二か月ぶらぶらする、という具合で、居候でもあり、月四万円もあれば、なんとか生活できたのです。その時、つくづく、多くを望まなけりゃ、けっこう呑気に暮らせるもんだなぁと実感し、べつだん、一生アルバイターでもかまわない