鏡の中にデビュー当時の松田聖子の髪型をしたおっさんがフレッシュさの欠片もない冴えない顔して佇んでいたので断髪式を開催する決意をして秋の気配を感じながら開けっ放しにしておいた夏の扉をパタンと閉めた。いつもの美容院に電話をすると「すみません予約がいっぱいなんです再来週はいかがですか?」などと素呑気なことを言っておるので、あんたはこの聖子ちゃんカットっていうかダイアナ妃(故人)が新婚当初にしてた外跳ねカールみたいな髪型のおっさんを見ても同じセリフが吐けるのか!と涙ながらに訴えたかったのだが、電話口のアシスタントのオンナのコが建物から走り出てきて『棄却』と書かれた紙を誇らしげに広げる光景が脳裏に過ったのでヨレヨレと力なく「あ、じゃあまた電話します」と絞り出して受話器を置いた。 とにかく可及的速やかに髪を切らないとかに道楽のウインウイン動く看板みたいな髪形になりそうだったので、石原良純のように口を尖