【北京=矢板明夫】チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(79)が、ドイツ紙ウェルトとの会見で、自身の後継問題を踏まえて、「チベット仏教の転生制度を廃止すべきだ」と述べたことが、波紋を広げている。中国外務省の華春瑩報道官は10日の記者会見で、「発言はチベット仏教の正常な秩序を大きく損なうもので、中央政府と信者は絶対に認めない」と反発し、転生制度の維持を求めた。 ダライ・ラマを含む活仏の転生制度は、チベット仏教の輪廻(りんね)観に基づく。高位の活仏は死後、教義に沿った生まれ変わりの霊童探しで後継者が選定される。転生制度の存否は、亡命先のインドで高齢を迎えたダライ・ラマの後継選定、さらにはチベット問題の行方に直結するものとして、これまで注目を集めていた。 中国政府は、無神論を信奉する共産党の一党独裁ながら、チベットでの転生制度を容認。高位の活仏だったパンチェン・ラマ10世が1989年に死