ベトナム人には なぜ「グエン」が多いか? 私が大学生だったころ、テレビは連日ベトナム戦争の戦局を報道していた。そのころの記憶のある人は、かなりの数のベトナム人の名前を覚えているだろう。とくに「グエン」という姓が多かったことが印象に残っているはずである。朝鮮半島に「キム(金)」という姓が多いのはよく知られているが、ベトナムの「グエン」の多さはそれを上回る。日本ではあまり知られていないが、ベトナムは東南アジアで唯一の漢字文化圏の国である。漢字文化圏と言うことは、箸で食事をし、儒教の影響が強い文化であるということでもある。そして、ベトナムの固有名詞(人名、地名)が朝鮮同様漢語であるという点では、ベトナムは日本以上に漢字文化圏の国だということができる。 ベトナム語の語彙には、日本語や朝鮮語と同じく、固有語をしのぐほどの漢語がある。「日本」が漢語であるのと同様、「ベトナム」という国名自体漢語であ