「可能性を信じて、勝負したい」。笑顔で報道陣の質問に答える高橋大輔(モスクワ、2011年4月30日、共同) ある男の言葉に、思わず「かっこいいな」とつぶやいてしまった。4月末。モスクワでの出来事だ。 「きれいにスケート人生を終えられないかもしれないが、できるところまでやってみようかな。今より落ちるかもしれないが、勝負してみたい。自分の可能性を信じてみたい」 言葉の主は、フィギュアスケートの高橋大輔(関大大学院)。2連覇を狙ったロシアでの世界選手権で5位に終わり、去就が注目される中での発言だった。25歳のおとこ気に触れ、胸が熱くなった。 2連覇を逃した演技直後も、高橋は現役続行への思いを口にしていた。だが翌日、日本の男子3選手が応じる予定だった取材の場は「気持ちの整理をするため」(日本スケート連盟関係者)に欠席。それを聞いた瞬間、「もしや翻意して引退するのではないか」と正直思った。でも思い過