東日本大震災の復興について政府は「市町村が主体」との立場をしきりと強調している。もっともな発想だと共感していたが、最近は別の意味がこめられているのではないかと勘ぐるようになった。 復興構想の中でも特に調整が難しいとみられる津波被災地住民の高台などへの集団移住を例に考えてみたい。 津波で悲惨な被害を受けた自治体の多くでは住民の集団移住を検討している。子孫の命と共同体を守るため、避けられぬ選択と考えたためだ。 宮城県東松島市の場合、津波浸水地区約3000世帯の移転を計画している。阿部秀保市長は「早いところは3月から住民が動いた。決して行政が誘導したものではない」と住民主導を強調する。 だが、政府のスタンスは揺れ動いている。 震災1カ月後、菅直人首相が高台移住構想を自ら語り、復興構想会議を発足させた。復興会議の提言でも高台などへの集団移住は「減災」の有効な手法として盛り込まれた。 ところが、国の