秋晴れの空の下、爽やかな風を受けて走るサイクリングが気持ちのいい季節だ。世の自転車ブームとともにこの数年、人気の輪を広げているのが自転車マンガ。競技レースや町散策の楽しさに気づかせてくれる魅力を探ってみた。 近年の人気の火付け役は、2008年に始まった渡辺航『弱虫ペダル』(秋田書店)だろう。千葉の高校に入学したアニメ好きの少年・小野田坂道が、自転車競技に出会い成長してゆく。 東京・秋葉原のオタク文化を愛し、小学生の頃から往復90キロをママチャリで通って超人的脚力を得た主人公のユニークさ、学校裏の「激坂」対決からインターハイへと至るスピード感ある展開など、少年誌の王道をゆく、勝負と友情のドラマに引き込まれる。 作者は以前、いちずなオタク青年の恋愛実話『電車男』のマンガ版をヒットさせている。秋田書店の武川新吾さんは、「アキバ大好きで弱虫の男の子が、ひたむきに一つのことに挑む純粋さを描いているの