高倉健インタヴューズ [文・構成]野地秩嘉 18年という長期にわたって行われた高倉健へのインタビュー集である本書で著者は「健さん」の徹底解剖に挑戦するが、その実像は新作映画「あなたへ」の霧に包まれた古城跡のように、全貌(ぜんぼう)が見え隠れする。 自己に忠実で常に自然体の健さんと時間を共有した者の多くは個を取り戻したかのような幸福感を味わうのが本書でもわかる。そんな高倉健は演技の核に「気」という見えない力の存在を設定する。このことが気になる著者は「気」の正体の究明にかかる。 「気」は絵画にあっても不可欠な表現力を有し、絵画が現実を模写することに意味のないように、映画には映画の現実が要求されるが、健さんの求めるリアリティーは違う。演じる人物の心情を共有することで内発する感情をそのまま映画表現に移植する。このことで虚構が現実と同一化するが、その力の源泉が「気」であるように思う。 本書でも触れて
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