シートベルトを締めるとほどなく、7.6トンの船体が「ふわり」と浮いた。飛行機離陸時のような重力や気圧の変化は全く感じない。ゆっくりと滑らかな上昇を続け、1~2分掛けて高度150メートルに到達。この段階でベルトを外し、機内を自由に動き回れる。一部の窓は開閉可能であり、秋風が実に心地よい。眼下には関東平野が広がり、その上空を歩いている錯覚に陥る。もし鳥になったら、こんな360度パノラマ風景を毎日見られるのだろう。(撮影=前田せいめい) 筆者が乗船取材したのは、世界に3隻しかない世界最大のドイツ製飛行船「ツェッペリンNT」。全長は75.1メートルに達し、ジャンボ機(ボーイング747‐400)を上回る。国内で飛行船の運送事業許可を唯一取得した日本飛行船(本社東京)が所有し、埼玉県・桶川の基地から東京・横浜方面などに向けて遊覧飛行を展開している。 なぜ今、飛行船なのか――。「空飛ぶクジラ」の魅力にと