「21世紀は人口爆発の時代であり、食料生産が人口増加に追いつかなくなる可能性がある。いつまでも安定的に食料を輸入できるとは限らない。輸入したくともできなくなる」 多くの日本人はこのように考えている。それが食料自給率を向上させなければならないとする根拠になっている。そしてTPPをめぐる議論でも、通奏低音として大きな役割を果たした。食料安保はTPPに反対する人々の大きな旗印であった。 筆者は3年ほど前に『「食糧危機」をあおってはいけない』と題する本を書き、食料危機説がいかに荒唐無稽であるかを説いた。しかし、その浸透はいまひとつのようだ。農水省が長年宣伝を繰り返した結果、多くの国民が信じ込んでしまったことを覆すのは容易ではない。 好景気に沸くバングラデシュ、雇用機会も給料も増えている 今回は実例を語ることから、食糧危機説がいかに見当違いかを示そうと思う。 実例とはバングラデシュだ。バングラデシュ