僕は思います。自分の好きな音楽をセレクトして友人にプレゼントするなどということは、「どの曲も素晴らしかったよ」と、全然趣味じゃなかった友人にかえって気を使わせてしまうのがオチであり、だから音楽のプレゼントとはもっとも控えるべき思いやりに欠ける行為なのだと。だからね、「鳥羽一郎全曲集」を知り合いのおっちゃんにプレゼントするのはやめようよ母ちゃん・・・。 クラシックからヘビィメタルまで、音楽の好みは個人の内面のみならず国籍、文化、宗教あるいは時代の影響を受け、その効用も赤ちゃんの子守歌から戦意高揚のための軍歌まで良くも悪くも幅広く、根深い。そんな音楽とはいったい何なのか――。 本書は、バンドマンとしての素地と、レコーディングエンジニアとしての経験と、認知神経学・脳神経学者としての研究という風変わりかつ剥き身の"三本の矢"を大いに駆使し、該博というより節操のない音楽見識(趣味)を全力全開しつつ