出かける前にちょっとだけ読むつもりが、すっかり引き込まれて一気に読了。大げさではなくて、文字通り身体が震えるほど感動してしまいました。くらもちふさこは昔から好きなんだけど、ここまですごかったかなぁ。 驚くべきは全2巻の長さでこれほど錯綜した人間関係を描き、複雑に絡み合う感情の綾を表現しきるその筆力です。主要登場人物(遊馬宇大郎=ウタ、紀朱子=キノ、由水月子=ツキ)の3人はもちろんのこと、例えば宇大郎の友だち藪木中(=ヤブ)がキノに思いを寄せていることをいくつかのセリフで簡潔に示すあたりのさりげなさは手慣れたものですし、ウタとツキを何度もすれ違わせつつ、いかに「出会わせないか」についても、実に巧みに設計されています。もちろんそこにはウタのことを好きなキノの(いささか浅はかな)策略もあるわけですが、それをうすうす察して出会いを微妙に回避しつつも、やっぱりまだ見ぬウタに会いたいという内に秘めた気