フェリス女学院大学教授の三田村雅子さんといえば、テレビの古典教育番組でよく知られている。独特の声音と、ものに憑かれたような語り口にはファンも多い。私は三田村さんとは会ったこともあるし、ご著書は送っていただいている。 その三田村さんの新刊である大著『記憶の中の源氏物語』が評判がいいようだ。もっとも、「右翼」に評判が良く、読売新聞では片山杜秀が書評していたし、それどころか三田村さんは『表現者』で前田雅之と対談をしていた。 私はここで久しぶりに泣いて馬謖を斬ることになる(まあ三田村さんは私の部下じゃないし教授で図書館長なんだから比喩としてやや不適切)。あれは「トンデモ本」である。(なお図書館長というのは学長に次ぐくらいの地位で、定年後の年金とか、受勲とかに関わってくる) むろん、『源氏物語』の享受史として、書かれた事実だけを読む分には良いのだが、そこに通奏低音として流れる三田村さんの解釈、主張は