「現代文学論争」のために書いたのだが、分量の関係で割愛したものである。未完。 福田和也という謎 福田和也(一九六〇− )は、江藤淳、柄谷行人の衣鉢を継ぐ文藝評論家とされ、慶応義塾大学環境情報学部教授である。これまでいくつかの論争を行ってきたが、むしろ福田自身が、謎めいた人物、論争的な人物だと言っていいだろう。 福田は慶大仏文科の大学院に在籍して、修士課程で追い出され、実家の仕事を手伝いながら、フランスが一九四〇年にドイツに降伏したあとの、ナチス協力作家たち(コラボラトゥール)を論じた『奇妙な廃墟』(国書刊行会、のちちくま学芸文庫)を一九八九年に刊行した。福田は、この本にはほとんど反響がなくがっかりしたと語っているが、実際には江藤淳がこれに目をつけ、翌九〇年七月号の『諸君!』に「遥かなる日本ルネサンス」を「大型新人登場」という見出しとともに載せ、論壇デビューした。これは隔月で四回連載され、同