スポーツを観るとはどういうことか? ー社会思想的スポーツ観衆論ー 卒業論文要旨 本稿はスポーツの観衆について、現場観戦者とテレビ観戦者に焦点を当てて考察するものである。人類は、日常における模倣と眩暈の要素を抑圧することによって文明化してきた。遊びという非日常で、同一化と興奮を民衆に提供するスポーツは、反動作用としてそれらを求める人々によって歓迎され、現代では娯楽として確立している。しかし、テレビの登場を機に憂慮すべき事態が浮上してきている。スポーツのテレビ中継によって、日常に噴出する興奮や熱狂はそれを抑圧している文明社会への反抗でもある。さらに、試合後の熱狂は試合中のそれを凌駕することも珍しくない。そして、興奮の副産物である暴力が噴出することもある。これらは、テレビ観戦者が自分達を現場観戦者と対等の存在と錯覚していることが、そもそもの原因なのだ。テレビ観戦者のスポーツを観る態度次第では、