江戸演劇史 (上・下) [著]渡辺保[掲載]2009年10月18日[評者]石上英一(東京大学教授・日本史)■人や事件を中心に古典劇を活写 歌舞伎や文楽を生み出した時代と社会を眼前に再現してくれる大著である。例えば次の一節に惹(ひ)きつけられた。1820年、三代目坂東三津五郎は大坂興行に向かう前に江戸中村座で「上坂(じょうはん)御名残の七変化」として「月雪花名残文台(つきゆきはななごりのぶんだい)」を踊った。 七変化のひとつが「猩々(しょうじょう)」の舞である。三津五郎は、五代目松本幸四郎、五代目岩井半四郎と共に当時の江戸歌舞伎の大看板の一人。和事(わごと)、世話物に長じ、女形も演じ、変化舞踊を得意とした。評者は子供の頃に節句祝いにもらった大事な猩々の人形を思い出した。病除(よ)けの願いらしい。赤頭の猩々の舞い姿を舞台で見たくなった。 五代目半四郎は、大きな目と官能的な唇をもつ美しい女形だっ
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