映画を観て、その感想を自分の中で咀嚼する際に、「どこまで自分に寄せて考えるか」を悩む時がある。 仮に物語の主人公と自分がある点について似ていたとして、「これは『自分』の映画だ!」と頭を殴られたような衝撃を感じ、涙を流したりもするだろう。あるいは、訪れた経験のある街並みが劇中に登場することで、そこにある空気をより身近に感じられたりもする。また、物語内の事象に現実に起きた事件や事故を重ね合わせ、必要以上に心を痛めることもあるかもしれない。「どこまで自分に寄せるのか」は、映画に限らず、フィクションを楽しむ際に常に存在している視点だ。 ・・・などといった思考が頭を過ぎったのが、『ジョーカー』であった。私はこの作品を、どの程度自分に寄せ、どのくらい現実と絡め、どのように飲み込めば良いのだろう。スカッとするピカレスクロマンか、痛烈な社会風刺か、ルサンチマンを煮詰めてしまった成人男性の代弁か。あるいは、