その瞬間、公式記録員席で「あああああぁ~」という声にもならない声をあげてしまった。 無死満塁からスクイズが成功し、一塁に送球する三塁手のすぐ後ろから、二塁走者がベースを回るのが見えたからだ。 事前予想で「2番手グループ」にも入らなかった金足農 2018年8月18日、第100回全国高校野球選手権記念大会の準々決勝。金足農(秋田)が近江(滋賀)を相手に決めた「サヨナラ2ランスクイズ」。あの興奮は、5年が経った今も鮮明に覚えている。 試合は4回、近江が6番・住谷湧也の右翼線二塁打で1点を先行。金足農も5回、右中間三塁打を放った1番・菅原天空(たく)を、2番・佐々木大夢(ひろむ)がスクイズで返して追いついた。 金足農は1回戦でスクイズを2つ、2回戦でも1つ決めている。 「金農は本当にバントがうまいなあ。かつての広島商みたいだ」 阪神甲子園球場のバックネット裏スタンド中腹の記者席内にある公式記録員席