テレビシリーズ、その劇場版に続き3回目の結末を迎えた『エヴァンゲリオン』。本作について、アニメ評論家の藤津亮太氏が語った(本文では劇中の内容に触れています。ご注意ください)。 ◆◆◆ 映画監督の黒沢清は、「世間が思ういわゆる“映画”」について、「『見せる』スペクタクルと『感銘させる』人間ドラマ」の融合である、と結論づけている(『映画はおそろしい』所収の「人間なんかこわくない」)。 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(以下『シン・エヴァ』)を見てまず思い出したのは、黒沢が記したこの「『見せる』スペクタクルと『感銘させる』人間ドラマ」という2つの要素で考える視点だった。 『エヴァンゲリオン』シリーズの2本柱と「人類補完計画」 というのも、私見を記すなら、『エヴァンゲリオン』シリーズは、「スケールの大きなビジュアル」と「個人のアイデンティティをめぐる内的葛藤」という両極端な要素を2本柱として出来上