10年間で培ったエモーショナルな歌心 M83の成長過程を振り返る 2015年に一大コズミック・ファンク・アドヴェンチャーに漕ぎ出したのがテーム・インパラ=ケヴィン・パーカーだったとしたら、今年その旅を引き継ぐのはM83=アンソニー・ゴンザレスなのかもしれない。いや、7枚目にあたる新作『Junk』でのアンソニーは、エレクトロニカとインディー・ロックを経由した新時代のグルーヴを切り拓くべく、時空のさらに彼方へと漕ぎ出した感がある。 いま聴き直すと、15年前に登場したデビュー作『M83』は決してそういう展開を、そういう野心を予告する作品ではなかったと思うのだが、逆に言えば、どう転んでもおかしくない出発点でもあったのか? ジャケットに2つの人影が描かれている通り、フランス南部アンティーブ出身のアンソニーとニコラ・フロマジョのデュオとして始まったM83は、同アルバムを映画音楽の影響が色濃いアンビエン