通常、近代がわれわれにもたらしたものは、人権・平等・自由の3つに要約されると考えられている。これについて、渡辺氏は「ある意味では」それに賛成すると述べる。ではあるが、それは「かなり疑わしく」「問題をはらんだ」贈り物であるともいう。 1)人権:江戸時代においても、百姓は百姓なりに、町人は町人なりに法の保護のもとにあった。公事(裁判所に出訴すること)や一揆は彼らの権利であった。なにかについて訴えをおこし、一揆をおこしたのである。かれらは現在のわれわれと同じように「自己の権利の主張」をおこなった。 飢饉がおこれば、幕府も藩も一定の対応はとった。飢饉がおきることを阻止できなったのは当時の社会構造では止むをえないことであった。当時においても「人権」はあったのだが、それがわれわれがなじんでいる近代的な人権概念とは一致しないということであり、その当時には人権はなかったと思ってはいけない。 2)自由:中世