中村勘三郎と坂東玉三郎が作り上げた「籠釣瓶花街酔醒」 ──お二人のお父様である十八世中村勘三郎さんが上演を重ねた、「籠釣瓶花街酔醒」にお二人が初役で挑みます。物語の舞台は吉原仲之町。ほんの江戸みやげがわり、夜桜見物のつもりで吉原に足を踏み入れた田舎商人の次郎左衛門(中村勘九郎)は、花魁道中で見かけた八ツ橋(中村七之助)に心を奪われ……という人間ドラマです。 中村勘九郎 父の勘三郎襲名で花魁の七越、歌舞伎座さよなら公演のときは父のそばで下男の治六を演じましたが、ついに自分が次郎左衛門を勤める日が……という思いです。父が演じるときには必ず、(坂東)玉三郎のおじさまが八ツ橋をなさっていました。2人が作り出す空気の濃密さは、同じ舞台に出ている人間にとってもすさまじいものがありましたね。八ツ橋のセリフに「浮き川竹の流れの身」とありますが、にっちもさっちもいかない次郎左衛門と八ツ橋に、こちらの胸も苦し