0. ぼくがイーガンの短編のなかでもっとも好きなのは“ルミナス”というエキセントリックな数学バトルの話なのだけど、その続編である“暗黒整数”がSFマガジン2009年3月号に掲載されていて、ようやく読んだ。 前作は前哨戦、というよりファースト・コンタクトまでの話。今回は「相手」との間に一定のコミュニケーションが確立した後の話で、平衡状態·冷戦状態から偶発事件をきっかけに大戦勃発の危機となって犠牲者も出てしまう、という緊迫の展開だけど、語り口はいつもの通りシニカルなユーモアを伴っている。 1. SFという小説ジャンルを、ぼくは〈世界原理のベースに自然科学の考え方·態度を据えて、外挿的に記述された小説〉というものとして捉えている。 でも普段読まない人たちにとっては、科学思考がどうとかいうよりも、宇宙船やらタイムマシンやらといった未来的な要素が出てくるものがSFだとイメージされているような気がする