庭に植えた梅の小枝が、朝、目覚めて見ると花を咲かせていた。春は、小鳥のさえずりや芽吹く草木など「見つけることのよろこび」に溢れている。何かが『育つ』姿を見ることのなかには、普遍的なよろこびがある。大袈裟だけれど「(成長が見たいから・大きくなるまで世話をしたいから)まだ死ねない」という気持ちになる。春だ。四季のある日本に生まれて良かったと、心の底から思える瞬間になる。 たのしみは朝おきいでて昨日まで無(なか)りし花の咲ける見る時橘曙覧「独楽吟」より 猿が風流をぶち壊した。 春の情緒を味わいながら「ゴミでも出しに行くか」と外に出たら、驚いたことに猿がいた(「猫かな」と思ったら猿だった)。近所のひとも「この辺は猿が出るから、戸締りをちゃんとしていないと家の中のものを持って行くんだよ」と聞いていた。おそらく、食べるものがなくなって山から降りてきたのだろう。鋭い眼光が「奪えるものは何でも奪うぜ!」と