彼が、「自ら立てた誓いを遵守する」ということに限りない憧憬を覚えているというのがわかってきた。ほぼすべての作品の主人公や、壊れていくキャラクター(それは悪役ではあるが切ないもう一人の主人公)の基本の動機構造が、「自ら立てた誓いを守る」という構造で成り立っていることがわかる。 □個人の内面を深掘りするが故に、他者に動機が感染していかない こう前回に僕は書いた。これはすなわち、奈須きのこが、「動機(=自らの中で誓いを立てて守りとおす)」を描く作家であるということを指示しており、彼の文体が美しく昇華するのは、やはり個人を描く時なんだろうと思う。ちなみに、これって、他者の心はわからないという前提がすごくある世界観なので、心象風景的には、ものすごく寂しい人物類型ですよね。 ちなみに過去の作品を追うと、この個人の動機がどこから来ているのか?という部分は秀逸なシーンで表現されていることが多い。『月姫』で