“リアル中学生日記”とも言える、とても面白い小説だった。 作者は、2年前に『りはめより100倍恐ろしい』で18歳にしてデビューした木堂椎。この作品は文庫書き下ろしである。 前作は高校生を描いていたが、今回は受験と卒業を控える中学3年生を題材としている。描かれるのは、所沢市にある鹿ノ丘中学校3年F組。このクラスの24人のうち12人の男女が、クラス替えの4月から卒業する3月まで、一月ごとに本人視点で描かれていく。偶数月が男子生徒で、奇数月が女子生徒だ。 この小説は、とくになにかの事件が起こる物語ではない。きっといまこのときも全国で繰り広げられているであろう、思春期の中坊男女の一喜一憂が細かく描写されている。 最初の4月で描かれるのは、テニス部に所属し、クラスでは中間層に位置する徳田陽司。彼は、影響力のあるクラスの上層に、媚びへつらうことに抜かりなく、自分のポジションを「自転車」と喩える。