このすてきな惑星には、男と女という二種類の生きものがいて、おおよそ男は79年、女は86年ほど生きることができる。宇宙の創造主がお染に与えた時間は、あと56年と8ヶ月ぶん残っていたが、お染には、残り時間を有効に活用しようという意志がなかった。なぜなら、生まれてからあるていど時間の経ってしまった生きものには、あまり価値がないというしきたりが、この惑星にはあったためである。彼女は、自分が生物としていちばん輝いている時間をすでに終えてしまったと考えていた。お染の職業は芸者だった。若い芸者たちが、自分のクライアントを次々に奪っていった。芸者とは、現金と引き換えに、しばらくのあいだ、歌や踊りや会話で男を楽しませる職業である。 残り時間を使い切るのがめんどうになった者には、自分のスイッチを切るという方法があった。みずからスイッチを切るのは、よくないことだといわれていたが、この惑星では、毎日たくさんの人が